闇に堕ちたエル子(第15話-メトロノーム)

休止を決めたのであれば黙ってそこを去れば良いものを、どうしても思いを断ち切れないのが私のダメなところです。

バカな私は彼に「ドラクエをお休みします」というラインを送ってしまったのです。
「私のことが負担になっているだろうからインは控えます。私も依存から離れるために頑張ろうと思います。迷惑かけてごめんなさい。」
というような内容でした。

こんな書き方をされたら相手は困惑するだろうなとわかってやっていました。
本当に「構ってちゃん」なズルい書き方です。

すると彼からは
「大事に思っている人に自分のためにインを控えるなんて言われて嬉しいはずがない。自分が望むのは○○が楽しく毎日を過ごすことだから、迷惑をかけていると思うのなら自分なんていなくても楽しく遊べるという姿を見せつけてほしい」
という返事が届きました。

正直、当時の状況で「楽しく遊ぶ」ことは私にはとても難しいことでしたが、私が彼のことを気にせず他のフレさんたちと遊んでいれば、彼も安心するだろうしまた声がかかるようになるかもしれない、と私は思い直しました。
もう彼とは特別な関係になることなどとっくに諦めていましたが、あのままの状況は精神的に耐えられなかったので、せめて普通に遊べる関係に戻したいなと思ったのでした。

それで、結局はほんの数日の休止のあと、また恐る恐るアストルティアに戻ることにしたのです。
心の奥底では、どんな状況でも彼に会いたい、そう思っていたのだと思います。
つくづくバカですね…。

けれど私は私なりに楽しく遊ぶよう努めました。
(楽しむことを「努力する」時点でそれはもう歪んでいるのですが。)
インしてもフレンド欄は極力見ないようにして、声をかけてくれるフレさんたちと楽しく遊びました。
それでも時々、チャットで「くだらないクイズ」を彼に仕掛けたりして少しは関わりを持とうとしていました。
慎重に…恐る恐る距離を測って近づいていました。

そんなある日。

珍しく彼は一人でした。

私は思わず「もし時間あるなら私の試練に行かない?」と声をかけました。
彼からは「この後約束があるけれど30分ぐらいなら」との返事がもらえたので、久々に一緒にPTを組んで遊びました。
久々の2人PTで、私は本当に嬉しかったのです。
私がもたもたしていたので30分では全部の門を回れそうになかったのですが、「少しぐらい時間過ぎてもいいよ」と彼が言ってくれ、そのことも嬉しく思いました。

けれども…。

試練が終わってPTを解散して、何気なく「ありがとう」と改めてフレチャで話しかけようとした時に、私は気付いてしまったのです。

彼がいつのまにか「非表示設定」でプレイをしていることに。

思わず例のエル子さんの欄を見ると、誰か一人とPTを組んでいる状態になっていました。

私は一瞬で理解しました。
エル子さんがPTを組んでいる相手は彼なのだと。
「この後約束がある」と言っていたので、たぶんいつもの固定PTなのだろうと私も思っていたし、彼がエル子さんとPTを組んでも別に何も言わないのに…。

どうしてわざわざ「非表示」にしているの…?
私が何か言うとでも思ったの?
それとも…
逆にエル子さんに私とPTを組んでいたところを見せたくなかったの?

色々な思いが頭を駆け抜け悲しくてたまらなくなり、言ってはならないと訴えるもう一人の私の心の叫びを押し退け、とうとう私は彼に言ってしまいました。

「なんで非表示にしているの?あなたが誰と何をしようと私はもう何も言わないのに。」

すると彼は
「考え過ぎ。言ったようにこの後約束があるから、誰からももう誘われないように非表示にしてただけ。」
と答えました。

そんなの嘘だ

と思いました。

わざわざ非表示になんてしなくても私とPTを組んでいれば誰からも誘われないし、もし誘われたとしても「約束あるから」で終わりでしょう。
だから見え透いた嘘だとは思いましたが、冷静になった私は言ってしまったことを後悔しました。
もうこんなことは言わないと約束したのに、また私はそれを破ってしまった。

「ごめんなさい」

私は彼に謝りました。

けれど彼から返ってきた言葉はたった一言

「許さない」

でした…。

いたたまれなくなり、私はログアウトした後、彼に何度もラインで謝りましたが彼からは返事はきませんでした。

これまで色んなことがあったけれど、「許さない」と言われたのは初めてでした。
彼はもう限界なのだと悟りました。
そして私ももうこれ以上は無理でした。

これで本当に彼とはお別れなのだと心に決め、私は彼に手紙を書きました。

「あなたに出会えて幸せでした」

と。
彼からもらっていたもので返せるものも一緒に送り返しました。

そして私からフレンドを切ろうとしましたが、

どうしても

どうしても

手が震えて最後のボタンを押すことができませんでした。
最後の最後まで情けない私です。

たぶん心のどこかで

彼がもう一度引き止めてくれるのではないか…

そんな風に期待していたのだと思います。

あさましくみっともない私。

彼からフレンドが解除され、ラインとツイッターがブロックされていることに気が付いたのは翌日のことでした。
その時私が思ったことは
「ああやっぱり」
ということだけでした。不思議と何の感情も湧いてはきませんでした。
むしろ、これで辛い思いをすることもなくなったのだと、どこかほっとした思いもありました。

けれど。

その後、いつも間に入ってくれていたフレさんにそのことを報告すると、その方がこう教えてくれました。
これは本当は内緒だけれども、と前置きをした後、彼がフレンドを解除したことについて

「そんな辛いことを、あの子にさせるわけにはいかなかった」

「これまで色んなフレンドを切ってきたけれど、こんなにも辛くて、切った後も幸せを祈っているのは初めてだ」

と言っていたと。

それを聞いた瞬間、それまでとうに無くなっていたと思っていた感情が、一気に押し寄せてきました。

悲しくて悲しくてどうしようもなくて
涙が後から後から溢れてきて止まらなくなりました。

もう二度と彼には会えないのだ

もうどうやっても取り戻せないのだ

ようやくそのことを直視した私は

その後何日経っても涙を止めることができませんでした。

思えば、彼も私もあまりにも不器用でした。そして未熟でした。
今ならお互いもう少しうまく立ち回れたのかもしれません。
けれど、それでも
あの時もあの時も、私たちは一生懸命だった。
だれが悪いのでもなく、どうしようもないことだったのだと
今振り返ってそう思います。

今回の詞は、スピッツではないのですが、当時ずっと聴き続けていた曲があるのでそれを載せることにします。

これから僕たちは どこへ行くのかな
全て忘れて生きていけるのかな
あなたが今どんなに 幸せでも
忘れないで欲しいんだ
僕の中にはいつも

すれ違って背中合わせに歩いていく
次第に見えなくなっていく
これからも同じテンポで生き続けたら
地球の裏側でいつか
また出会えるかな
(メトロノーム/米津玄師)

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