闇に堕ちたエル子(第13話-若葉)

その後の年末年始はずっとフレンドさんたちと一緒に過ごしました。
大晦日には、公式が主催する恒例のカウントダウンにも参加しないまま彼やそのフレンドさんたちと一緒にコインボスめぐりをして遊びました。
迷宮の中で新年を迎え、みんなで「あけましておめでとう!」と言い合い写真を撮ったのもいい思い出です。

そして私は…
本当に何も考えずに、確かレグナード(レベル1)に行く際に例のエル子さんを誘いました。
私は、彼のフレンドの女性にはいつも警戒していましたが、私自身のフレンドさんに関してはまったく無警戒でした。
レグナードにも行けるようになったとのことだったので練習になればいいなという程度の気持ちでした。
彼女は魔法使いで参加しましたが、初めての挑戦だったため頻繁に死んでしまい、それを僧侶で参加した私が都度蘇生しました。
レグナードは初見なら死にまくっても無理はないのですが、彼女はそれが恥ずかしかったのか悔しかったのか、戦闘が終了した後、解散するまでほぼ無言のままでした。
(まぁふだんからあまりしゃべらない人ではありましたが)
そしてその後すぐにログアウトしてしまいました。
私はそんな様子を見て「経験の浅い彼女にはレグナードはまだ無理だったかもしれないのに誘ってしまって申し訳なかった」と反省し、以後はもうエンドコンテンツには誘わないでおこうと思っていました。

ところが。

その後、確かバラモス強に彼から誘われて参加した時、何故か同じPT内にその彼女がいたのです。
話を聞いたところ、共通のフレさんに紹介されて既に2人はフレンドになっていたとのことでした。
その時はちょっと驚きましたが、相変わらず彼女はPT内ではほとんどしゃべらないし特に彼とも親しくはなさそうでしたから、私は「バラモス強なんかに参加して(当時バラモス強はかなりの強敵でした)、また萎縮するようなことがあれば申し訳ないな」程度にしか思っていませんでした。
実際、戦闘中にやっぱり彼女は頻繁に死んでしまい私はその蘇生に追われる状態で、本当に心が汚れてて自分でも嫌になるのですが、へっぽこな私よりももっとバトルが下手な彼女にほんの少し優越感を持ったりもしたのです…。

そんなある日。

私はいつものように「コインボスに行こう」と彼から誘われてPTに入りました。
すると、また例のエル子さんがPT内にいました。もう一人はいつも固定のように遊んでいる男性でした。
「こんにちはー。よろしくね」と挨拶しながらも、私は少々複雑な気持ちでした。
また別の日には、私と彼といつもの男性で組んでいて、あと一人誘おうという時にやっぱりそのエル子さんが誘われました。
そんなことを繰り返すうちに、私の心の中にはいつのまにか黒いモヤのような感情が生まれ、日が経つにつれそれは少しずつ少しずつ拡がっていきました。

そして。
今も思い出すと胸が苦しくなる瞬間を、それからしばらく経った後に私は経験することになりました。

その日私がログインしてみると、彼はもう既に誰かとPTを組んでレンダーシアのとあるフィールドにいました。サポートが一人で、後の2人はプレイヤーのようでした。
話しかけて聞いてみると「宝珠を取りに来ている」とのことでした。
私は嫌な予感がして思わず「私も行きたい!」と言い、そのPTに参加させてもらいました。
「○○まで来て」と言われ飛んで行くと、そこにいたのはいつもの男性と、やっぱりそのエル子さんでした。
そして「これから○○まで行くよ」と言われドルボードに乗って移動を始めた私が見たものは…

彼の黒竜丸の後ろの席に座っているエル子さんの姿でした…。

それからの苦痛の時間を、どう表現すればいいでしょう。
一つのドルボードに乗って一緒に移動する2人の後ろをトボトボと付いて走る私。

これはただのドルボード。
ただの移動手段。
彼女はまだ不慣れだから仕方ない。
この場所をまだよく知らないんだろうし。
だから乗せてあげてるんだ。

そう…きっとそれだけ。

仕方ない。
仕方ない。

私はそう自分に言い聞かせ言い聞かせ、彼女に思わず「降りて!」と言いたくなる衝動をぐっとこらえ、はしゃいで冗談を言ってその数時間を耐えました。

確かにドルボードなんてただの移動の乗り物なんです。
そう思う人にはきっと理解し難い気持ちだろうとは思います…。
彼もおそらく何も考えてはいなかったのだろうなと思います。
でも私はゲームと現実の区別もロクにつかないバカだから、そんなくだらないことが

どうしても
どうしても

悲しかったのです。

優しい光に照らされながら 当たり前のように歩いてた
扉の向こう目を凝らしても 深い霧で何も見えなかった

ずっと続くんだと思い込んでいたけど
指のすき間からこぼれていった
(若葉/草野正宗)

ここまでお読みいただきありがとうございます!
ブログランキングに参加してみました。よろしければ押して帰っていただければとても励みになります。どうぞよろしくお願いします。


ドラゴンクエストXランキング
このページでは、株式会社スクウェア・エニックスを代表とする共同著作者が権利を所有する画像を利用しております。当該画像の転載・配布は禁止いたします。 (C)2017 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.(C)SUGIYAMA KOBO(P)SUGIYAMA KOBOJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.(C)SUGIYAMA KOBO(P)SUGIYAMA KOBO