闇に堕ちたエル子(第3話-歌ウサギ)

その日以来、私たちは急速に近付いていきました。

ログインすると、すぐにお互いに声をかけ合い、2人で、あるいはお互いのフレンドさんを交えて色々なコンテンツを遊びました。
彼は、とても面白くてフレンドリーで、知り合ったばかりの私のフレンドさんともすぐに打ち解けて仲良くなっていました。
全員水着でコインボスに行って全滅したり、フレンドさんの家でだらだらおしゃべりしたり、本当に楽しくて楽しくて時間があっという間に過ぎて行く感覚でした。
そしてフレンドになって1週間も経たないうちに、遊んだあとは自然にどちらかの家に行き、ログアウトするまで2人で話をするのが当たり前の状態になっていたのです。

そんなある日、いつものように色々話しているうちに、何がきっかけだったかは覚えていませんが、私は自分の家庭事情をその彼に打ち明けてしまいました。
これまで誰にも話したことのない、とても重い話です。
少なくとも知り合ってすぐの人に話して聞かせるような内容ではありません。
深夜という時間帯が私をハイにさせたということもあったかもしれません。
ともかく、一度堤防が決壊すると止まらなくなり、私は自分のこれまでの辛かった経験を、リアルについてほとんど何も知らないような相手に延々と語ってしまったのです。

その人は、間に言葉を挟むことなく、私の話をただ黙って聞いてくれました。
その後、私が話し終わると
「ちょっと待ってて」
と言い残し、ルーラでどこかに飛んでいきました。

そして
「いいものを見せてあげるから、おいで。●●と書いてある石を使ってね。」
と、PTを組んでいた私に、自分のとあるルーラ石を使うように言いました。

なんだろう?と思いながら、私は指定された場所にルーラで飛んでみました。
すると着いた場所は、ジュレット住宅街の「白亜の臨海都市」なのでした。

「ここから見る夜明けの海がすごくきれいだから見せたいと思って」
と彼は言いました。
その頃アストルティアでは夜明けの時間帯。ちょうど太陽が昇りかけているところでした。

実は、私は当時はオルフェアに住んでいましたが、以前「白亜の臨海都市」にも住んでいたことがあるので、そこから見る夜明けの海が素晴らしいことはよく知っていました。

それでも。

その日見たジュレットの海は、私にとってはそれまでに見たどんな景色よりもまぶしく輝いて見えました。

その人は、結局最後まで私の「告白」については何も触れませんでした。
ただ黙って一緒に座って夜明けの海を見ていただけです。
「ここは誰の家?」
と聞くと、
「知らない人の家。」
と、いたずらっぽく笑いながら(見えませんがたぶん(笑))答えました。

そして最後にひとこと

「大丈夫」

と。

そのたった一言で、私はそれまで自分の中に澱のように貯まっていた色々な思いが、一気に洗い流されたような気がしました。
今思えば、突然そんな重い話を知り合ったばかりのフレンドから聞かされて面喰らったろうし、困っただろうなと思います。
私自身も、何故話してしまったのか今でもよくわからないでいます。

ただ、そのことがきっかけで、2人の間にはまたひとつ「秘密の共有」という親密なカードが加えられることになったことは確かです。

それが良かったのか悪かったのか。

わからないまま時は過ぎてゆくのでした。

こんな気持ちを抱えたまんまでも何故か僕たちは
ウサギみたいに弾んで
例外ばっかの道で不安げに固まった夜が
鮮やかに明けそうで
(歌ウサギ/草野正宗)

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