「必要な不便さ」を理解していた人ーDQX初代ディレクター藤澤氏のSQUARE ENIX退社に思うこと

私がドラクエ10を始めた頃に感じていた疑問のひとつに
「ドラクエ10では、移動手段として何故あんなに便利なドラクエ伝統の呪文『ルーラ』を採用せずに『ルーラストーン』なんかを実装したのだろう」
ということがありました。

だってルーラストーンって数も限られていますしいちいち登録しなければ使えないしあまりにも不便じゃないですか。
そもそも初期には持てる石の数も少なかったですしね。
ルーラストーンが不便なため、昔はグレンに「ルーラ屋」なる商売をしている人たちがいたほどです(笑)。
私はそこにとても不満の念を抱いていました。

移動手段ひとつとってもそのような不便さがあり、その他にも色々と不便を強いられる事やクリアが大変なクエストなどが多くあったため、ドSとしか思えない藤澤Dのことを、私はドラクエを始めた当初はあまり良く思っていませんでした。
(決定的だったのは、王者装備をあっさり「捨てていいですよ」と言ったことですけども。)

けれども、この記事を読んで私の彼を見る目は変わりました。

一度行ったことのあるところなら簡単に移動できるルーラの呪文を実装せずに敢えて不便なルーラストーンを採用した背景には「利便性と冒険感の両立」という意図があったのですね。
ルーラで移動できる場所が限られていれば、移動にはどうしてもフィールドを利用することになりますし、そこで他の冒険者を見かける機会も増えることになります。
MMOなのに他のプレイヤーとフィールドで出会うことがないというのは、確かにあまり良い状態ではないのでしょう。
また、プレイヤーの登録している「ルーラストーン」をお互いに貸し借りすることで交流のひとつにもなるという副次的な効果もある。
(昔はよくPTを組んだ人の石を貸してもらい「借りルーラ」とか言っていたものです(笑)。特に種族固有の「故郷の石」はとても便利でしたね。)
今思えば本当によく考えられていたのだなぁと感心します。


※キラパンのルーラはとっても可愛い☆

その後ディレクターが交代し、現在のアストルティアを色々便利にした結果、一時期はフィールドに出ても他の冒険者を見かける事がほとんどないという状況が日常化してしまっていました。
閑散としたフィールドを見て私はとても寂しい気持ちになっていました。
それはやっぱりMMOとしてはどうなんだろうと思います。
(現在は白箱探しや盗み金策の目的で、一時期よりはフィールドで他のプレイヤーを見かけることは多くはなりましたね。)

何もかも便利な方向へ向かうばかりがいいことなのではない。
不便さゆえの「楽しさ」「冒険感」、苦労して手に入れるからこその「満足感」「忘れがたい思い出」
忙しい現代日本ではだんだん難しくなるのでしょうけど、「利便性と冒険感の両立」について、今一度運営の方には考えていただけたらなと切に願います。

一方で藤澤Dは「ドラクエ10はいつでもやめられ、またいつでも好きな時に戻ってこられるゲームにしたい」とも言われています。
そう言えば、色々な場所で藤澤氏は何度も「いつでもやめていい」と発言していました。
実のところこの発言については、私は違和感がありました。
10年続けたいと自身が言っているサービスで、同時に「いつでもやめていい」ってどういうことなんだろうと。

でもよく考えたら、そうなんですよね。
ドラクエって元々そういうゲームなんです。
ストーリーを楽しみつつレベルを上げて装備を整えボスを倒して「ああ面白かった」で終われるゲーム。
「終わらないドラクエ」は本来のドラクエではないのです。
でも「終わらない」からこそ、いつでも「また始められる」「戻ってこられる」のです。

その時に、操作方法が複雑だとカンを取り戻すのに時間がかかり、それだけでげんなりしますよね。
実際、私はモンハンを少しやっていましたが、今もう一度始めたらたぶん操作できないです。
(まぁ元々あんまりちゃんと操作できていませんでしたが・・・)

ドラクエ10は他の一般的なオンラインゲームと違って画面上の情報が本当に少なくて操作方法もシンプルです。
それがバトルだとアイコンが重なって見難いなどの弊害の元になったりもするのですが、たとえばドラクエ10が、画面上にたくさんのアイコンがずらーっと並んでいたりマクロを組む必要があるゲームだったら、おそらく私は始めてもすぐに挫折してしまっていたでしょう。

私は、ドラクエ10を始めてすぐに「あ、いつものドラクエだ」という親しみを覚えたことを今でも覚えています。
シンプルな戦闘画面、「いつものボタン」で開閉するコマンド画面。
ああ、オンラインになってもこれは間違いなくやっぱり「ドラクエ」なんだなぁと嬉しく思いました。

上に挙げた記事中にもありますが、キャラクターの名前の重複をOKにしたというところもドラクエらしさでしょう。
いつもドラクエで使っているキャラクター名をそのまま使えるという部分にすら、「ドラクエらしさ」の一環としてこだわったということにも驚きました。
また、敢えて「ひらがな」と「カタカナ」のみにしてアルファベットを排除したという部分。
徹底して「いつものドラクエ」にこだわっていたのですね。

実は、当初はドラクエのオンライン化には大反対だったという藤澤氏。
だからこそ、逆に一般的な「とっつきにくくわかりにくい」MMOとは一線を画したシンプルさとわかりやすさを追求できたのかもしれません。

堀井雄二氏の想いを尊重し、どこまでもドラクエ”らしさ”を追求しつつそれをうまくオンラインゲームの世界で違和感のないよう生かすために、様々な工夫を重ねてこられたのですね。
余談ですが、藤澤氏は、かつてこのような話もされていました。

「強敵とのバトル」については、「人と一緒に遊んだほうが絶対に有利」となるように“あえて”調整をしています。
極論を言えば、サポート仲間と一緒の方が楽にボスに勝てるように調整することは可能なのかもしれません。ですが、もしもそれをやってしまったら、ドラゴンクエストXはオンラインゲームとして破綻してしまうと思います。
(どの作品とは言いませんが、藤澤はドラクエの過去作で「めいれいさせろ」で何回やっても勝てなかったボスにAIが楽勝したときに、とても絶望的な気持ちになりました。下手なだけって話もありますが)
なので、サポート仲間を連れた状態の方が、プレイヤー4人でパーティを組んでいるよりも、“あえて”やや弱くなるようにしています。

開発・運営だより -第13号- (2013/10/29)

藤澤氏がまだドラクエ10のディレクターであれば「聖守護者の闘戦記」はどんなものになっていたのでしょうか。
少なくとも「仲間モンスターを入れたほうが楽で簡単」にはならなかった気がするのですが・・・。
ちょっと興味があります。

と、ここまで藤澤氏を持ち上げてきた私ですが、それでも私は諸手を挙げて藤澤氏を賞賛するわけではありません。
色々な細かい点では不満もありましたし、正直な話、ディレクター交代については当初は歓迎していたぐらいです。
でもやはり、彼のドラクエに対する熱い想い、ゲーム全般に寄せる深い情熱には尊敬の念を抱いています。

そんな藤澤氏は、実はスクウェア・エニックスをすでに退社されていたそうですね。

もう二度とドラクエ10に藤澤氏が関わることはないのかと思うと寂しい気持ちになりますが、おそらく彼はスクウェア・エニックスで働くたくさんの方達(もちろんドラクエ10を作る運営の方にも)に多くの影響を与えてこられたことと思いますし、藤澤氏の思いを継承して、今後のドラクエ10がより良くなっていくことを私は切に願っています。

思いがけず長くなってしまいましたが、藤澤氏の新たなフィールドでのご活躍をお祈りしつつ、今回はここまでにいたします。

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