【短編小説】ねこまどうの憂鬱(第8話)

わたぼうに頼まれた仕事は、ぜんぜん難しいものじゃなかった。
ルーレット屋の近くには小さな倉庫がいくつかあって、その内のひとつにルーレット屋の景品は収められている。
あたしはそこから毎日メダルとかチケットなんかをルーレットの景品所に補充するだけ。
あとはなんにもすることがない。
ただそれだけのことで一枚メダルがもらえるなんて。

きっとわたぼうはあたしに同情して、なんとか仕事をつくってくれたのだろう。
あたしはそのことに感謝しなければいけない。
ここを出られる日がきたら、何かわたぼうにお礼がしたいな。

ここを出られる日・・・。

 

毎日ここでぼーっと暮らしているうちに、もしかしたらあたしはここで一生暮らすことになるんじゃないかって
もうここを出られる日なんて二度とこないんじゃないかって
とてもとても不安になる。

毎日ぼーっとして・・・
時々催されるパーティーに他の魔物たちと参加して味のしないお肉をたべて
そしたら「なつき度」っていうものが強制的にあがっていく。
あの人と一緒にいるわけでもないのに
あの人はどこにもいないのに

なんで「なつき度」があがっていくんだろう。
考えれば考えるほどわからくなって
あたしはどんどん壊れていく。

何もわからない日々
ただわかっているのは、
あたしは「ゆず」じゃなくて「クズ」なんだってこと。
あたしの存在は憂鬱でしかない。

はやくここを出たいよ。
でもそんな日は本当にやってくるのかな・・・。

そんな暗い日を何日続けただろう。
メダルはもう10枚なんてとっくに超えちゃって、今は50枚ほどになってる。

そして今日も同じ一日が終わる。

ぼんやりとそんなことを考えていた時、突然声がきこえた。

「ゆず、おいで!一緒に戦おう」

あの人があたしを呼ぶ声。

 

振り返ると、いつのまにか今まで何もなかったところに小さなドアが出来ていた。
あの人の声はそこから聞こえる。

おそるおそるそちらに近づく。
ドアノブを軽く引くと
びっくりするぐらいそれは簡単に開いて

その先には明るい光が満ちていた。

「ゆず、出ておいで!一緒に行こう」

夢にまでみた日
ここを出られる日。
あの人と一緒にまた戦える日。

これはほんとうのこと?
それともやっぱり夢?

戸惑いながら後ろをみると
ほかの魔物たちは相変わらず所在なさげにそこらへんをうろうろしていた。

「良かったね。メダル交換できるといいね」

わたぼうがにこにこしながらあたしに声をかけてくれた。

嘘じゃないんだ
夢でもないんだ

「ありがとう!」

あたしは嬉しくて嬉しくて
涙をぽろぽろこぼしながら
何度も何度もお辞儀をしながら小さく手を振って「牧場」を後にした。

そうだ

わたぼうにお礼をするのを忘れてしまったな。
こんなあたしにあんなに良くしてくれたのに。
後であの人に相談しよう・・・。

その時のあたしは

この先に自分の身に訪れる運命のことなんて
まったく想像もしていなかった。

そう

あんな日がやってくるなんてことは・・・。

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