【短編小説】ねこまどうの憂鬱(第7話)

2018年4月25日

「浮かない顔って・・・ここの仲間たちはみんなそんな顔してるじゃない」

不思議に思ってあたしは尋ねた。

「うーん、まぁそうなんだけどね。」

台の上にもたれかかるようにしながら、わたぼうはあたしをじっと眺めている。

「なんだかキミは、他のやつとは少し違うみたいなんだな。」

「どこがどう違うの?」

他の仲間モンスターを眺めてみても、あたしには違いがよくわからない。

「なんだろうな。他のみんなと違って、キミはここに満足してない。違うかな?」

わたぼうはルーレット台に並べてある小さなメダルを指ではじきながらそう言った。

言い当てられてあたしはちょっとびっくりした。

「わかるの?」

「そりゃもちろん。僕はここでたくさんの仲間たちを見てきているんだからね。」

「あたし」

「うん?お役に立てるかはわからないけど、話ぐらいなら聞くよ?」

わたぼうは首を少し傾げてあたしに微笑みかけた。

「魅了を防ぐメガネを探してるの。それを手に入れるためにここを出たいの。どうやったらそれが手に入るか、あなたは知ってる?」

言葉が堰を切ったように流れ出てきた。ここに来て以来、言葉を使うのは初めてだから、ちゃんとしゃべれないかと思ったけど、そんな心配はなかったみたい。

わたぼうは、あたしの顔をじっと見た後、静かにこう言った。

「そうか、どんな事情かは聞かないけど、キミの希望はわかった。」

そして、さっき指ではじいていたメダルをひとつつまんで

「魅了を防ぐメガネはね、このメダルと交換で手に入るんだよ」

そう教えてくれた。

あたしはびっくりして、矢継ぎ早に質問を投げかけた。

「そのメダルはどうやったら手にはいるの?」
「あたしもルーレットできる?」
「メダルはどこで交換すればいいの?」
「何個あればいいの?」

わたぼうは、あたしの勢いに気圧されたようにちょっと後ろに下がった。

「ちょっちょっと待ってよ」

「ごめんなさい。でもあたし、どうしても」

「言い方が悪かったね。期待させてしまって申し訳ないけど、このメダルは人間専用で、魔物には手にいれることは出来ないシロモノなんだ」

わたぼうはそう言ってあたしの前にあったメダルを後ろの箱に収めてしまった。

「そんな・・・」

わたぼうは申し訳なさそうにあたしを眺めてため息をひとつついた。

その時。

「おい!さっきから聞いてたら、何ケチくさいこと言ってんだオマエは!」

どこからともなく、「わたぼう」の色違いのモンスターが現れた。

「ワルぼう!今はオマエの受け持ち時間じゃないだろう?」

その魔物は「ワルぼう」という名前らしい。

「細かいことはいいんだよ!」
「それよりさ、景品のメダルぐらいくれてやれよ。どうせいくつか減ったところで誰も気付きゃしねーよ」

「キミはまたそんなことを。」

わたぼうは、ため息をひとつつき、しばらく何かを考えた後、あたしにこう言った。

「そんなに欲しいなら、少し分けてあげることは出来るかもしれない。でもさすがにタダでってわけにはいかない。」

「な、なんでもします!だからお願い!」

あたしは必死だった。魅了を防ぐメガネが手にはいるならあたしは何でも出来る、そう思っていた。

「じゃあこうしよう。キミは今日から僕のルーレットのお手伝いをするんだ。景品の補充とかをね。
それで、1日働いたらメダルを1枚あげることにしよう。魅了を防ぐメガネは確かメダル10枚で交換できるはずだから、10日働けばいいね。ただし毎日ルーレットがあるわけじゃないから、10日以上かかっちゃうかもしれないよ?」

「それでいいです!ありがとうございます!あたし頑張ってお手伝いします!」

あたしは感謝を込めて深々とねこまどう式のお辞儀をした。

「ただ、メダルの交換をするには、ラッカランという島のオーナーのところに行かなくちゃならないし、魔物が交換できるかどうかは・・・。」

「そこはあとで何とか考えます。」

正直なところ、何をどうすればいいのか見当もつかなかったけど、小さな希望が生まれたことがただあたしは嬉しかった。
なんの希望もなかった砂漠のような毎日に、陽炎のようなオアシスが遠くに見えたような気がした。

そんなわけで、その日から、あたしの牧場での臨時アルバイト生活が始まったのだった。

つづく。

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