【短編小説】ねこまどうの憂鬱(第6話)

2018年3月8日

牧場は、しんとしてとても静かだった。
草も木もたくさんあるのに、葉擦れの音もしない。風も吹かない。
もちろん雨も降らない。
芝生を踏みしめてもかさりとも言わない。
寒くもないし暑くもない。

この世界は、いったい何なのだろう。

そこにはあたし以外の仲間モンスターもいたけど、みんな所在無さげにあたりをうろうろするだけ。
お互い話もしない。

なんだか時間の感覚もなくなってきたけれど、眠くもならないので眠ることすらできない。
だからあたしもまた、他の仲間と同様に、そこらをふらふらうろつくことしかできなかった。

そんな退屈な日々の中、時折ふいに「パーティ」と呼ばれるものが開かれる。
「パーティ」が始まると、どこからともなく見たこともない仲間モンスターが現れて同じテーブルにつく。
そしてあたし達は出されたお肉を黙って食べる。

味なんかわからない。満腹感もない。
でも何故か、そこに出されたお肉は全部食べなければいけないという義務感に駆られ、気がつくと夢中になって食べ尽くしてしまっている。
そして、それを食べるとあの人の役に立ちたい気持ちが強くなる。
会いたくてたまらなくなる。

これは、何なのだろう。
あの人は、こんなところにあたしを連れてきて、いったいどうしたいのだろう。
あたしはもう十分にあの人の事が好きだし、いつも役に立ちたいと思っているのに。
これ以上、あたしはどうすればいいのだろう。

考えていると、あたまがぼぅっとしてきて、なんだか泣きたくなる。

でも涙は出ない。

だってここは

つくりものの世界なのだから。

もしかしたら
あたしの想いも…
初めからつくられたものだったのかもしれない。

何の味もしないお肉なのに夢中になって食べてしまう。
そうしたらこんな風にあの人に会いたい気持ちがどんどん強くなる。
それは、やっぱり最初から仲間モンスター自体に仕込まれた感情だからなのだろうか。

そうだとしたら、あたしは、あたし達は、ただあの「にんげん」と呼ばれる種族にいいように使われているだけ?

でも。

それでもいい、とあたしは思った。
つくりものの感情でも何でもいい。
あたしはあの人に会いたい。

あの人に会うには、ここを出るしかない。
ここを出るには、何をすればいいだろう。
あたしはもう十分に回復したということを、また一緒に戦いたいと思っていることを、どうすればあの人に伝えられるだろう。

そんな風にぐるぐるととりとめのないことを考えていると、ルーレット屋と呼ばれるところで店番をしているわたぼうがふいに話しかけてきた。

「こんにちは。浮かない顔だけど、どうかしたの?」

つづく。

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